保温性が高く、デザイン性も優れている土鍋は、使うのが難しそうという印象を持っている方も多いかと思います。ですが、陶芸家の敦賀 研二(つるが けんじ)さんがつくる土鍋は、割れにくく、たわしで強く洗っても問題ない丈夫さと、モノをのせるところから逆算したデザイン性が特徴で、「普段づかいのもの」としての美しさを追求しています。JIBUN STOREでは、普段使いの美しさにこだわった敦賀さんの土鍋「灰釉(かいゆう)フタ付片手土鍋」と「灰釉土鍋7号」を販売しています。
今回は、敦賀さんがつくる土鍋の魅力と、土鍋があることで生まれる暮らしの豊かさについてご紹介します。
大学を中退し、陶芸の道へ
敦賀 研二さんが陶芸と出会ったのは、高校1年生の頃。工芸の授業でろくろを使ったときに喜びを感じ、そこから陶芸に魅了されていきました。
当時のことを、敦賀さんは次のように振り返ります。
「なんでもない塊から、自分の思ったものが出来上がっていくのが嬉しかった。ゼロから作品を作り上げていくことに喜びを感じました」
その後、九州大学に進学するも、将来就きたい職業を考えた時に陶芸の道に進みたいという思いが強くなり、陶芸の修行をするために退学を決意。
小石原焼の人間国宝、福島善三さんを訪ね、福岡県朝倉郡東峰村で住み込みの修行を始めました。
「毎日使って気持ちの良いものは美しいものであるべき。綺麗なラインで作りなさい」という福島さんの教えのもと、ラインやフォルムにこだわり、一つ一つの形を大事に作品を作ってきた敦賀さん、5年間の修行の末、福岡県糸島市にて独立し、2011年にはご自身の工房兼ギャラリーである「うつわと手仕事の店 研」を開きました。
「普段使いのもの」でも美しさを
ご自身の工房を構えた後も、敦賀さんは福島さんの教えである「普段使いのものでも美しさを」ということを大切にしています。
敦賀さんが思う美しい器とは、「初めて見たのに、昔から家にあったような感じがして、すぐに家に馴染んでいくもの」だといいます。
そんな美しい作品を作り上げるために、料理が盛り付けられた状態から逆算して器をデザインしています。
作品へのこだわりについて、敦賀さんは次のように語ります。
「どんな作品をつくるか想像する時に、中に料理が入った時にどう見えるか、ということにこだわっています。だから装飾も少なめで、むしろ足りないくらいなんですよね」
敦賀さんの作品は、シンプルでフォルムの美しいものが多くあります。
そこには、敦賀さんの「普段使いのもの」でも美しさをというこだわりがつまっています。
「今の粘土に至るまで3年」土鍋制作の試行錯誤
JIBUN STOREで販売している敦賀さんの土鍋。
その土鍋にも、普段使いを意識したこだわりがあります。
粘土の調合に挑戦した敦賀さん。
様々な種類の粘土を試したり、調合を変えたりと試行錯誤を繰り返し、納得のいく粘土にたどり着くまでにおよそ3年を費やしました。
試行錯誤の末出来上がった土鍋は、通常の土鍋よりも高温で焼いているので割れにくく、たわしで強めに洗っても問題ないくらい丈夫で、土鍋をこれまで使ったことがない人でも扱いやすいものになっています。
人がいて、料理が盛り付けられて完成する土鍋
敦賀さんは、ご自身がつくる作品に対して「使ってもらって、モノをのせてなんぼ」という思いを持っています。
土鍋は、家族みんなで鍋をつつくという生活スタイルの真ん中に置かれるもの。
土鍋のある暮らしの豊かさについて、敦賀さんは次のように語ります。
「鍋料理の日が増えたら家族で食事を囲む頻度も増えていく。土鍋があることによって、家族が食事を囲むということにつながって、その時間をみんなで楽しんでもらえるといいなと思っています」
モノをのせるところから逆算された暮らしに馴染むデザイン、扱いやすい丈夫さなど、普段使いにこだわった土鍋には、そんな家族団らんへの願いが込められています。